ACC-J茨城 山岳会備忘録

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奥秩父、中津川・重石 -かさねいし-[ワフー]

2025/11/1 奥秩父、中津川・重石 -かさねいし-[ワフー]


時は巡り、たとえ道が変わったとしても、魂は消えない
そして、萌える

どれだけの熱量があるか
記録を通して、それは伝わる


事の始まりは山登魂山岳会のHPで公開された記録だった
秩父、中津川渓谷にある岩稜の開拓記録だ

情熱は人を突き動かす
理由など、ない
自分にできることはひとつ
それを行動で示すことだ

不安定な天気に悩まされた10月某日
単身偵察により地理的理解を深め、取り付きと大まかなラインは自分なりに定めた
あとは機会を待つだけだった

そして11月1日
nksさんとその機会を得た


林道大滝上野線ゲート前から林道を歩く
前夜の雨により所々に水溜まりがあるが、幸い空は青い

しばらく行くと、視界に重石-かさねいし-(ワフー)が聳え立つ
ここで見えるのはあくまで岩壁の下部
さらに上部へと岩壁は続いている


林道で装備のあらかたを身に着ける
間知石の端から一段上がって植林帯を行く
薄い踏み後があるが、足場は悪い

10分ほど登って支尾根に出たらこれを詰めていくと岩壁の末端辺りに突き当たる
このあたりには古いフィックスロープも残置されており、何時の頃か登られていたことがわかる


少しトラバースして、落ち葉の被った岩をひと登り
立ち枯れの大木の袂でロープを出す
このあたりは決して足場がよくない
予め装備を林道で身に着けたのはそういう理由だ


岩壁下部は甘いホールドが多いフェース
一段上にハンガーボルトが穿たれている

なんとか1ピンまで到達
本来はここからフェースを直上なのだと思う
しかしながら昨夜の雨が乾ききらずに濡れた壁は、とても直上する気になれなかった

ベストな選択ではないとはわかっていたが、自分の得意とする泥臭い沢登的なルート取りとした
1ピン後は、右にトラバースし藪のバンドを右上
支点は貧弱な灌木頼り
比較的立派な立ち木を支点に1ピッチ目を切った


2ピッチ目はここから右上
途中からフェイスに復帰するように左上する
だんだん岩も乾いてきてフリクションも信用に足るほどとなってくる


しかし中間支点はあまりとれず、キャメ0.75が一か所、か細い灌木が2カ所ほど
Ⅲ+位だと思うがランナウトしていると、まぁまぁ緊張する

ロープが重くなってきて、ピッチを切る
支点は親指ほどの灌木と気休め程度にしか入らなかったハーケン


右を見ると50mくらい先にピンクテープの巻かれた松の木が見える
山登魂パーティーはあちらを登ったらしい
確かに重石(ワフー)下部のピークに出るあのラインが、クライミングとしての完成度は高い


山登魂の開拓記録には見知った名もあった
彼とは御神楽岳水晶尾根や鬼が面東壁、奥利根横断で行動を共にしていた

奮闘的な登攀で闇につかまり、星空を仰ぎながらの下山に
「11月はヘッデン残業に良い季節ですね」などと軽口を叩き合ったのは、今となってはいい思い出だ

もちろん、その彼の活躍は自分の事のように嬉しかった
そして、眩しかった


3ピッチ目はnksさん
フェースを左上
ようやくすっきりとした岩登りピッチ
10mほど行くとハンガーボルトから支点を得られ、既存ルートに合流する
ココからリッジ状をひと登りで岩稜上の松の木に届く
松の木には懸垂支点が設けられているが、劣化は激しい


もちろんここから懸垂下降も可能だが、アルパインとしては重石(ワフー)の岩稜を詰めあがりたい
岩稜上は脆い岩が堆積し、落石注意
念のため、しばらくはロープを出してクライミングシューズで行く
主岩稜との合流点まで3~4ピッチほどで、Ⅱ~Ⅲ級といったところ

この先どうなっているのかという不安もあったので靴は履き替えずに行く
結果としては、途中フェースやクラックを登る場面もあったが登山靴でも充分登れるレベルだろう




側稜東壁の最下部を登ったために1330のピークまでは遠い
とはいえ、秋と壁を感じながらの登行は楽しかった

1330峰
ここからは東の肩へと10m程懸垂下降
靴を履き替えて歩いて下る

峰の東コルへと向かったと思ったのだが自然と北方向に下らされ、傾斜の落ちた所から東へトラバース
偵察時に立った見覚えあるコルに至った

そこから東南稜へ進み、重石(ワフー)東壁を俯瞰する
コルへと戻ってひと休みしたら、後は落ち葉とガレに埋め尽くされた沢筋を下る

所々にクライミングのフィールドとなり得る壁も散在する
丹念に通ってみてもいいだろう

沢筋は次第に岩壁から離れていくが、トラバースして岩壁基部に沿って進むと取付きに戻る
あとは支尾根~植林帯と今朝の踏み後を忠実に下る


林道に着いたら装備を片付け、歩きながらヘッデンを灯す


「11月はヘッデン残業に良い季節ですね」
あの時の軽口が口をつく

互いの健闘を労った彼との過去の記憶
今日の山行はその彼への「敬意」に他ならない

喜びの時も、悲しみの時も
山を共にした事実は変わらない

そして伝えたい
魂を繋げ、と

時は巡りたとえ道が変わったとしても、

あの日の情熱
それは変わらない

この返歌が彼に届いてくれるといいのだが


sak

 

※この岩稜については山登魂山岳会の調査記録から「重石-かさねいし-」と表記します
また、その記録発表に敬意を表し、当初呼称されていた「ワフー」表記を合わせて記します

◆山登魂山岳会:重石[ワフー]の記録

https://yama-to-damashii.outdoor.cc/20250728wahuu/20250728wahuu.htm

 


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