2026/9/5-7 朝日連峰・荒川西俣沢
秋雨前線の影響で目指していた場所の気象条件は良くなかった
絶望的というほどではない
それでも個人の想いを果たすための拘りより、少しでも天候リスクの低い場所を選ぶ
ここは沢ヤとして冷静な判断をすべきだろう
転戦先に選んだのが朝日連峰、荒川西俣沢だった
同行のfjdさんの提案に惹かれるものがあったからだ
朝日連峰は私にとって初めて入る山域
活動範囲が広くない私にとって、新たなフィールドとなるのか
そういう期待もあった

2026/9/5
道の駅小国で夜を明かし、大石橋登山口まで入る
しばらく登山道を歩く
途中の吊り橋は踏板が足場板(約30cm)から丸太(約10cm)と次第に難度を増していく
しかも、手すりとなるワイヤーが左右高さが違ったりしてバランスがとりづらく、なかなかのアトラクションだ

え、これ渡るの?
ラスボスとして現れるのが大玉沢の吊り橋
踏板がワイヤー2本(約5cm)という漢を試される仕様
一瞬たじろぐが、荒川入渓はこれを渡らず手前から沢へ降りる
とはいえ帰りはあれを渡るのか、と心に楔を打ちこむように吊り橋を見上げる

荒川はしばらく、河原歩きに終始する
噂に違わぬ清冽な流れが心を洗う



大釜ノ滝は左岸をヘつり、瀞場は泳ぐ
五連の滝はなかなかの迫力
実に開豁で美しい沢歩きだ



左に毛無沢を見送って、曲滝はロープを出して右岸から小さく巻く
ズルズルのドロドロで悪いが、残置が幾つかあるのでそれを利用する
滝上に出ると滝の飛沫に虹がかかっていて、束の間の彩りが添えられていた
不意に訪れる、ご褒美が嬉しい
少し上流の幕営適地でひと休み
この先、幕営地が求められるかどうか不安はあったが二人なら最悪ごろ寝でも仕方あるまい

綾滝は左岸バンドから滝裏を潜って通過
青空の下で、これは堪らなく楽しい
少し泳いで、トイ状三段10mは最後の滝が登れないので右岸巻き
手がかりの少ないのっぺりとした岩を一段上がって草付きをトラバースする
ロープを出すが支点が取れない
トラバースなのでスリップには注意が必要だ

この先、廊下状の途中右岸から西俣沢が出合う
時間は昼前
この先へ進むという選択肢もあったが、今日はここまで
楽しみは明日に取っておこう、ということになった

西俣沢出合左の河原を整地して二人分の寝床を確保
あとは焚火の準備に勤しむ
この時間、いつもなら仕事場で何をしている頃だろう
そう思いながら仰ぐ青空はいつもより清々しかった

明日の高揚も不安も清々しさに洗われながら盃は進む
初日は登攀も少なかろうと持ち寄ったアテも充実していて、入山祝いと言ったところか
陽が沈めば谷間の岩を照らす焚火が心を穏やかにさせてくれる
空には星に紛れて人工衛星が西から東へいくつも通過していく
ただそれを一つ二つと数えながら夜空を眺める

同じ山を行く
目にするものも、感じる空気も、指先に伝わる感触も、たぶんそれほど違わない
それでも、見えるものは違う
山との向き合い方
何に惹かれ、
なぜ立ち止まり、
どこへ行くのか。
同じ場所に立っていても、だ
2026/9/6
5時起床、6時半発
雨は無いが、風が強く上部はガスがかかっている
西俣沢を行く
※以降は「yamakurumiさんの記録:朝日連峰荒川西俣沢」と滝の高さなど照合し記載する※
出合の2段15m滝、1段目8mは左壁から中段で水流に入って詰める

2段目7mは水流右の細いルンゼをロープを出してfjdさんリードでいく
中段がヌメヌメなのでスタンスを吟味して乗り込み、細い灌木を掴んでいく
上部で被る岩を右から巻いて抜ける
4mは左、1m、2m、5mを左、難なく通過
6mはヘつって水流右を行こうと思ったが、水流近くがヌメヌメで断念して左巻き
1m、1mは難なく通過

2段15m
右から左上、水流の右壁を直上
ロープを出してfjdさんリード
4mトイ状は右
1.5m釜持ちは泳いでから水流左

正面に20m支沢を見て、本流は右に屈曲する
5m、5mは難なく通過

2段15mは1段目8mを右壁から左上し流れを渡る
2段目は左スラブを直上するが、一段上がるところに手がかりがない
安定したスタンス(岩の割れ目に草が生えたバンド)から左へ半身ずらして小さな岩の窪みを使う
足を上げたら、後はフリクション頼みで抜ける
3m左、7m左、8m左で通過

12mは右からヘつって滝上部は水流右を行く
ヌメリもあるが水流中のスタンスを使って半身シャワーで通過
fjdさんがフリーで抜けたので、お助けロープを出してもらう
3m滝は難なく通過
右岸から支流の40m多段滝が流入
右岸に幕場となり得るスペースはあるが落石跡が多数あり、適地とは言い難い
右岸から支流のスラブ60m滝が流入
沢の真ん中に大岩があり上部は平滑
ひと休みに丁度好い
6m斜瀑は難なく通過
沢は左に屈曲し、100m大滝が姿を現す
日本登山大系では100mと記載されているらしいが、それほどの高さは感じない


1段目は右岸の階段状から凹角を行く
中段バンドで水流跨いで左岸へ
2段目は左岸の乾いた凹角から左リッジへ乗り移って滝上へ
ここからしばらくゴーロが続く
5mゴーロ滝は気づかず通過
開放的な三俣は左俣へ
すぐに二俣となり、本流は左俣に見えるが、この先不安定なガレ場登りに終始するらしい
パートナーと相談して右俣へ行く
5m程の滝を登るが水が冷たい
「もしかすると雪渓があるかもね」などと言いながら行く
しかしすぐに沢が二分する
本筋は左沢、ガレて水流は無い
もしかするとインゼルで繋がっているのでは--
そんな興味もあって右の流れを詰めてみるが、流れの正体は湧き水で支尾根手前で行き詰まっていた
本筋(左沢)に戻って涸沢を詰める

次第にチョロチョロとした細い流れが復活して、行く手に7mスラブ滑滝
右岸の草付きをfjdさんが空身で上がって、荷揚げ

草に埋もれかけたガレの詰めを淡々と行くと稜線に乗る
時間は11時過ぎ
相変わらず風が強く視界は無いが、余裕をもって小屋まで行くことはできそうだ

風を避けながらひと休みして、あとは胸程の笹藪と灌木コギに終始
西朝日岳までは約3時間
fjdさんにはゆっくりだったかと思うが、慌てずに往なしながら行く
お付き合いいただき感謝です
西朝日岳からは登山道を行く
視界が無いのは残念だけど、この真っ白な世界に自分の色を乗せてみる
そんな山もいいではないか、と少し強がってみる
それでも一瞬ガスが晴れれば、そこには朝日の雄大な景観が広がり、嬌声を上げる

あとは淡々と歩を進め、金玉水で水分補給して大朝日小屋に投宿
小屋番さんに受付と協力金を支払って、あとは快適小屋ライフ
相変わらず、風は強いが小屋は一切揺るがない
しかも、今日は貸し切りの様相
足も伸ばし放題、カラッとした空間は心まで軽くなるようだ
あとはわずかな酒で小さな宴
月も望めない天気だけど、歓びなんてほんの些細なことで満たされるもの
この多幸感と言ったらない
これまで歩いて来た径
発見、教訓、そして山への眼差し
そうしたものが少しずつ重なっていく
2026/9/7
強風は未だ止まない
窓を風雨が叩く
あとは下山するだけ
そういう気楽さがあるものの、午後に向けて天候は悪化していくらしい

小屋番さんも早めに下山するとのこと
我々も手早く食事を済ませて下山開始
窓から伝わる風の音ほどには、荒れてはおらず歩行に支障はない
むしろ、大玉沢のあの吊り橋をどう渡ろうか、今からそれが気がかりだった

そして朝日連峰の主峰、大朝日岳
おそらくは雄大な景色なのであろう
しかし頂からの景観も、今は真っ白極まりない
いつかきっと――
そんな想いとともに、白霧に巻かれて歩く



それぞれの景色
見えているものなど、ほんの一部
見えないものを抱えたまま、山を行く
歩いた径は変わらない
sak
動画も











































































































