ACC-J茨城 山岳会備忘録

山でのあれこれ、便りにのせて。 ただいま、ACC-J茨城では新しい山の仲間を募集中です

摺上川滑谷沢左俣

 

2026/6/8~9 摺上川滑谷沢左俣


「萬世ノ永キニ渡リ人々ニ愛サレル道トナレ」

二ツ小屋隧道を望む
吹き抜ける風
これから始まる道の先に何を見るのか

一日目

悩ましい天候
最近の山行は天気に翻弄されることが多い
今回も梅雨時期ということを踏まえて、北から南まで4つのプランを想定した

数日前の気圧配置から一番北に位置する摺上川滑谷沢に行先を定め、当初は右俣から栗子山を経由するつもりだった
しかし直前の予報で、現地は前日から当日朝方まで雨となりそう
ならばと、当日朝発で左俣をゆったりめぐる縮小プランとした

東栗子トンネルの手前を右折
急勾配の舗装路を上がり切る未舗装路となるが、デリカならなんとか走行できそう

途中、右から古の萬世大路を合わせる
九十九折りの悪路を経て、二ツ小屋隧道

至る所に崩落跡のある隧道を走り抜ける
しかし万一、この二日間で隧道内に崩落があり車両通行が困難となった時に「詰んで」しまうため、
隧道入り口まで戻って、そこを起点とする

再度、隧道を歩いて抜ける
往年の行路を偲ぶノスタルジー
まるで時間が巻き戻るかのような空間だ

欄干が所々崩落した烏川橋から入渓
しばらくは烏川を下る

メンバーは4人
yukさん、tkmさん、oksさん、そしてsak

oksさんは初めての沢登
そのため道中、沢登についてのレクチャーをアレコレしながら行く
今回の主眼は沢での一泊を存分に楽しむこと
そのための生活技術や知見を伝えたい
いずれにせよ、慌てる沢旅ではない

烏川の下降はなんてことのない河原が続くが、森が近くて美しい
とはいえ熊との遭遇も懸念されるので辺りを見回し、警戒しながら歩く

幾つか滝場も出てくるが、小さく巻き下ることができるため通行に困難は無い
ただし、大変ヌメるので要注意

釜のある小滝でメンバーの一人から「飛び込んじゃダメですかね?」との質問
「釜も浅そうだから、やめといた方がいいと思うよ」と答えたのだが、
その直後に不意に足を滑らしウォータースライダーのごとく釜に滑り込んでいた

メンバーが皆、笑顔
当の本人も笑顔
「まぁ、笑えるのならいいか」

魚影が走るのを見ながら淡々と下ると滑沢谷との出合
入渓からおおよそ2時間
幕場適地でひと休みしてから滑沢谷に入る

烏川が本流で滑沢谷は支流なのだろうが、流域面積が広い滑沢谷は水量が多い
昨日の雨も影響しているのだろう
とはいえ腰を濡らすこともないのだが、ヌメりにやられて転倒したならその限りではない

メンバーが皆、笑顔
当の本人(私)も笑顔
「まぁ、笑えるのならいいか」

1時間半ほど遡行すると二俣
その手前右岸に整った幕場適地

時間が許せば奥の二俣までというプランもあったが、今日の日暮れから明日朝にかけて雨雲の通過がある
13時
今日は早めに行動を切り上げて、沢泊の準備に勤しむ

薪集めと焚火の準備、宴の準備にも手間暇かかる
さすがに4人いると準備もはかどる
幕を張っている途中に雨が落ち始め、今宵の宴も危ぶまれたが焚火の勢いも何とか安定した
あとはタープの下、持ち寄ったアテで乾杯の儀

いつもながら、沢泊は楽しい
独りなら、対話と発見
仲間となら、融和と共鳴
歓びを伝撒できたなら、言うことはない

そして紅蓮華のごとき、炎のゆらぎ
人類文化の原点というべきこの癒しのリズム
焚火にはそういう魔力がある

焚火を眺めながら、宴は始まる
メニューはいつもスーパーで物色して使えそうなものを持参している
それに現地で調達できたものを加えていく

sakにとってはいつもの事ではあるし、それほど気合を入れたものではない
しかしながら皆さんには大変好評で、この沢旅で私は「料理の上手い人」的な評価をいただいた

高級料亭より旨いです、とか
圧巻の手捌き、とか

ただパックを開けて切りそろえて並べたり、少し混ぜ合わせたり、焚火で煮たり焼いたり、捌いただけなんだけどね

まぁ、おそらくはアレだ
皆さん、酔いが回っていろいろ麻痺しているのだろう

みんな、焚火のせいだ


ふとtkmさんが「こういうのを今度は自分が教えなきゃですね」と、呟いた
何か少し、この責務に対して不安そうな面持ちも垣間見えた

沢旅は楽しむもの
楽しそうな径が、進むべき道
「教えなきゃ」ではなく、「まずは自分が楽しんでね」というような助言をしたような、しなかったような

まぁ、おそらくはアレだ
私も酔いが回って、いろいろカッコいいこと言いたくなっていたのだろう

これも、焚火のせいだ

 

二日目

今日は栗子山の山頂付近は天気が悪いので、左俣を遡行し林道に出て終了の予定
ゆっくり起きて、姥湯温泉にでも行こうという癒しの計画

夜に雨は降り続いたが、朝には上がった
天候予想がキッカリ嵌って、したり顔

6時起床との申し合わせだったが、尿意に促されて少し早めにテントを出る
するとすでにoksさんが起きていて、昨夜の燃えさしで火起こしにトライ中だった
コツを伝えて、朝餉の食材を準備して戻ると立派に炎が揺らいでいた

皆が揃って朝のティータイム
今日の行程、時間計画など含めた、意思確認を軽く済ませる

朝食は棒ラーメン
焚火缶二つで4人前だと湯量が少なく、麺の茹で加減には不安があった
棒ラーメンは携帯性はいいんだけど、たっぷりのお湯で茹でないとあまりおいしくないんだよね

一口食して、やっぱりお茶づけにすればよかったかなと少々後悔した
昨夜の食事に関する感動の声から一転、皆無言で麵を啜っている様子から、おそらく同じ感想なのだろう
まぁ、本来あるべき妥当な評価に戻ったということだ
気を取り直して、撤収の手順や焚火の後始末などのレクチャーをして準備が整い左俣へと進む

左俣は所々滝も出てくるが、ロープを出したくなる場面はなかった
しかし、さすがに沢登りっぽいこともやっておこうかと、裏見ノ滝の右岸を小さく巻く時にお助けロープを出し「肩がらみ」を実践してもらった

あとは滑床をひたひた歩いたり、森の広がる流れをのんびり歩く
出発してから2時間ほどで、右岸にピンクテープを見る
おそらくこのあたりから林道に上がるのだろうと思ったが、もう少し遡行して傾斜が緩んだあたりから林道へと上がった

萬世大路は、このあたりでも廃道特有の藪に埋もれた様子はない
WEBで検索すれば、その探訪記録が散見できるくらい歩かれているからだろう
事後に気になり調べたものだが、この先の「栗子山隧道」は今もその姿を遺すが、崩落によって山形県側に抜けることはできないらしい

「萬世ノ永キニ渡リ人々ニ愛サレル道トナレ」

萬世大路は明治14年10月、明治天皇の東北・北海道行啓に際し、当地を御通行になられた天皇陛下から願いを込めて命名されたもの、とのことだった

今回の沢旅は「山岳会」という小さな繋がりの中の出来事だけど、沢登という文化を繋げる一員として、その生活技術や所作、癒しと歓び、成長を感じてもらえたならこの上なく嬉しい

そしてあの時の出来事、感じたこと
それを忘れないために、記録をしたためるのだ
言葉や文字、詩曲、絵や写真でもいい
あの日の想いを描き遺す

あなたの言語で
あなたの世界を
それが、あなただけの旅

そして継がれる、愛される道
想いを言葉に託して


sak

 


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谷川岳・一ノ倉沢衝立岩中央稜

2026/5/28 谷川岳・一ノ倉沢衝立岩中央稜


もう、この家に帰ることはないのかもしれない

山行前、そう過ることがある
歳を重ねる度その想いは強くなり時折、怖くなる

谷川岳一ノ倉沢へ向かうとき、その心象は顕著だ

 


前夜、道の駅で仮眠をとってロープウェイ駐車場まで移動
夜明けと共に歩き出す
闇を突いてのアプローチも一案だったが、テールリッジが濡れているだろうと日が昇ってからの行動とした

 

一ノ倉沢出合で装備を付けて歩き出す
懸念していた天候は何とか保ってくれそうだった
衝立ノ頭に雲はかかるが、国境稜線の向こうに青空も覗く
この谷特有の雨もなく、来てよかったと思う

 

雪渓を歩いてテールリッジ
いくらか濡れていたため、下部と上部でロープを出す

yukさん、nksさんは二度目
oksさんは初めてのイチノクラ
予定では中央稜を登攀し北稜を降りる計画
後は天候がいつまで保つかで撤退、同ルート下降も想定しておく

雪渓の歩き方や巻き径、一ノ倉の各ルートなど適宜アナウンスを交えながらのアプローチ
これから始まる物語を予感しながらの楽しいひと時だ

 


「鎌鼬 -かまいたち- が来るよ」

実体のない不安に怯えたあの頃
今も変わらず心の奥深く
暗く柔らかい場所に、臆病な僕がいる

恐怖を克服する方法はある
しかし、消えてなくなることはない
心の奥底にいる僕の微かな声に耳を傾ける

都合のいいことは想定しない
恐怖と共に歩むのも、生きる術のひとつだ

 

 

中央稜取付きでロープを出して登攀開始
清々しい風と青空に囲まれる登攀日和
加えて本日は貸し切りとなりそうだ

sak・nksパーティ-で先行
yuk・oksパーティが後発

sak、yukが常に真ん中に入り前後のフォローをする布陣
つかず離れず、全体統制して安全範囲を確保する

1P、リード
緩いフェースから上がる
次第に立ってくる逆層フェースを詰めると立派なビレイステーション

2P、フォロー
左へ回り込んで、ルンゼ状を直上
nksさんはルンゼ中盤からカンテを右へトラバースし、脆弱な支点でビレイ
トラバース前にある支点で切ると良いのだが見落としたらしい
後発には、そちらの支点でビレイするようアドバイス

3P、リード
小さな凹角からフェース
弱点を突いていけば困難はない

イワツバメが飛び交う谷を見下ろすと谷川に来ているな、と実感する

4P、フォロー
下部はフェース
上部でチムニーを行くか、左のカンテを回り込んでフェースを行くか
チムニーは容易に見えるが、最後の抜け口が薄被り
フォローの私はフェースを行く

聞けばリードのnksさんはチムニーを行ったらしい
ということは、チムニーに入ってからは支点を取らずに抜けたのか
なかなか、硬派だな

5P、リード
左の凹状フェースから踏み跡をたどる
じめっとした凹角を登ってピナクルに出てピッチを切る

6P、フォロー
凹状の岩壁を直上
上部はリッジ状で岩も乾いて快適なクライミング

7P、リード
容易な岩稜を暫く登り、左に回り込む
最後はジメジメの凹角を登って左側からピナクルに出る

この頃から雲底が次第に下がってくる
夜にかけて下り坂の予報
雨が落ち始めたら、即撤退だなと考えながらフォローを迎える

後発のoksさんはピナクル右から上がってきた
滑る凹角よりこちらの方が快適なのかもしれない
次の機会に確認してみよう

8P、フォロー
正面に岩塔が見え、終了点は近い
リードは支点をとりながら正面のフェースを行く
ちょっと記憶と違うな、と感じていたが中間支点は取れていたので後追いフォローする

9P、リード
ここからだと正面の岩塔へと伸ばすのが自然だが、過去の記憶やトポと整合性が取れない
ちょっと嫌な感じはしたがハーケンを追っていくと薄被りとなる
右下に目を移せば、明らかな「土のルンゼ」が見える
やはり、あちらを行くのが正解だろう

 

「鎌鼬 -かまいたち- が来るよ」
微かな声に耳を傾ける

 

薄被りを抜けて上を目指すことも過ったが、この先に支点があるとは限らない
一手前に残置されていた支点とカラビナが同様に入り込んだパーティーの退却点であったことを示していたのだろう
登り始めていた後発のyukさんには少し待機していただき、残置点までクライムダウン
そこから土のルンゼへロワーダウン

nksさんには同様に残置支点まで登ってもらい、そこからロワーダウン
合流してから一旦ロープを解いて回収する

後発パーティーには、やはりロワーダウンで一旦ビレイステーションまで戻ってもらう
そこからは右方向、土のルンゼを上がってもらうよう指示した


衝立ノ頭、肩のコルで登攀終了
何とかここまで天気は保ち、すぐに雨が落ちる様子もない

ロープの屈曲する同ルート下降を嫌い、進路を北稜に定める
後発が上がってくるまでに北稜の下降点を確認しておく

全員揃って、最終ピッチの反省会
とかく谷川の登攀はルートを外すと岩が脆いため思わぬトラブルに陥りやすい

私はこの時、過去の脱出劇を思い出していた

 

2008年6月
谷川岳烏帽子沢奥壁、凹状岩壁の5ピッチ目

霧に巻かれながらもパートナーを送り出す
25mほど送り出した頃、急にロ-プが伸びなくなる
状況確認すると「浮いてて悪いです」との回答
その後、小さな落石

パートナーが「何とか右にトラバ-スでいけそうです。支点もあります」 
と言ったその直後、大きな落石
壁に身を寄せ落石に背を向ける 

手をかけた電子レンジほどの岩があっけなく剥がれた、とのことだった
幸いパートナーもフォールすることなく無事だとコールがあった

落ち着いた後、ハーケンを重ね打ちしてピッチを切ってもらう 
しかし、ザイル操作に合わせて動くはずのロ-プが動かない
違和感を感じて目で追うと、霞む靄中にダランと脱力している青ロープが見える
ロープを手繰ってみると抵抗なく手元に収まり、切断点を確認した
頼み綱(赤ロープ)も確認すると損傷が酷く、切断せねば使えないシロモノとなっていた

その後は脱出行
切れたロープと手持ちのハーケンを頼りに、地道に懸垂下降を繰り返し窮地を脱した

あの時、パートナーがフォールしていたら
あの時、私がフォールラインにいたら
下降で手持ちのギアを使い切っていたら

生の先に、死が横たわっている
目の前か、それとも遥か先の出来事か
それは見通しの悪い山道のようなもの

私は一体いつ、どう死ぬのだろうか
それでもこの径の先には、最高のものが待っている

 

終了点から衝立岩の岩壁方向に下っていくと立派な懸垂支点
ここから5ピッチの懸垂下降で「浮いた立ち木」

ここの残置スリングは古そうだったので、一本巻き加えて空中懸垂
降りついた先からもう1ピッチでコップスラブなのだが、懸垂支点の場所は足元が悪く4人立つのが少し怖い
安定した場所で一旦待機


前ピッチの懸垂下降ロープを引き抜かずに利用し、確保しながら一人づつ懸垂支点まで移動
50m1本でコップスラブまで降りたら、ピナクルまで少し歩く

そこから左に水流を見ながら軽い藪歩き
略奪点手前で軽アイゼンを履いて雪渓をトラバース
衝立前沢を下り、最後の大滝は50m一本で懸垂下降

 

雪渓の状態を充分観察してから上に乗る
あとは軽アイゼンを利かせてザクザク降りる

一ノ倉出合に戻る
振返れば、衝立岩

また、家に帰ることができるという安堵
いつ、どう死ぬかはわからない
この先の事はわからないけど、今できる事は「どう生きるか」ではなかろうか

陽も暮れて家路を急ぐ
街の明かりに、わが家の灯を想う

sak



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子持山獅子岩南壁

2026/5/9 子持山獅子岩南壁


天気予報が数日前に暗転した
またも、天候に翻弄されることとなりそうだった
宇宙から俯瞰したならシミのような雨雲でも、地面から見上げれば生死を分けることもある
所詮、自然に生きるものはその摂理に従うほかあるまい

こんな時に活きてくるのが過去の経験だ
イチノクラ早朝撤退を想定してプランした子持山

近隣、かつ大幅転装なく転戦が可能
初めて取付くメンバーがいるなら尚良し
CLのsgmさんにそう進言し、気持ちよく受け入れてもらえた

結果としては水上に行くまでもなくの転戦
季節外れの冬型で谷川は悪天でも子持山まで暗雲は届かない
早朝集合で7号橋駐車場まで下道アプローチとお財布にも優しい

木橋を渡って屏風岩を見上げる
先頭はoksさん
この岩場を目の前にして火がついたのだろうか、心なしか歩くのが早い
しんがりを行くsakは息も上がるが、平気なふりをしながら後を追う

標識の「この先危険」の方向に進路をとる
このちょっとした背徳感が良い

基部に着いたら装備を付ける
CLの意向もあって荷物は残置せず、すべて担いでいく
アルパインを意識したトレーニングといったところだ

獅子岩はsak以外は初めて
それを考慮して3ピッチまではsgmさん
それ以降はoksさんがリードの計画

1ピッチ、20m(sgmさん)
スラブ状フェースのハンガーボルトを真正面に直上するより、その左にあるL角を繋いで行くと容易
冬型の影響か、登攀前から風が強まる
晴れてはいるのだが、雲が早い
時折小雨が落ちてきて、谷川に行かずに正解だったと皆の意見は一致した

 


2ピッチ、20m(sgmさん)
下段のハイステップと中段のクラックに足を乗せるあたりが少し緊張する
このピッチを登攀中、後続パーティーが1組
さらにその後4人パーティーがやってきて準備を始めていた

3ピッチ、25m(sgmさん)
フェース左上からフレークを使って草付きテラス
ノーマルルートで一番面白いピッチ(だと思っている)
ここでロープを組み替えて、oksさんにリード交代

このあたりでヘリが飛来
獅子岩を旋回し、岩塔北側でホバリングしているようだった
後に調べると、救助訓練だったようで一安心

4ピッチ、25m(oksさん)
核心ピッチ
フェースを直上して一旦右に寄ってから左に回り込む
中段で手足の細かい所があるので、リードは緊張するだろう

oksさん、途中レストしながらも奮闘
粘り強い登攀は研鑽の賜物だ

5ピッチ、20m(oksさん)
のっぺりしたスラブを乗っ越す一歩が怖い
フリクションは効くので思い切って立ちこむ

6ピッチ、20m(oksさん)
正面垂壁中段から左上し、獅子岩の登山道まで
細かい手足を繋いで行くが、中段でフォール
大事はなく、継続リード
核心ピッチでの消耗状態を確認すべきだったかと反省する

7ピッチ、15m(sak)
最終ピッチは左に回り込んで垂壁をと考えたが、足下はハングとなっている
落ち方によっては中吊りとなるのであきらめ、オーソドックスに右へ回り込む
小カンテ右から左に回り込んで凹角を行く
最後は右の踏み跡に逃げ、山頂石碑にメインロープを巻いて終了
oksさんとsgmさんは最後のひと登りで正面クラックを使って登ってきた

そして獅子岩の頂峰から広がる景観
赤城の裾野は雄大
獅子岩南に見える背びれのような岩塔はその造形に見応えあり
北へ目を向ければ子持山
私自身、獅子岩は5回目なのだが子持山に行ったときは無かった
「山頂行きますか?」とメンバーに問うと、「今日は(行かなくて)、いいです」との返答

快適な登攀、その終了点でこの景観
まぁ、そうなる(充分満足してしまう)よね(笑)

登山道を下って、見晴らし岩で獅子岩を鑑賞
下山は屏風岩への尾根を行く

途中、振り返れば青空に獅子岩が突き抜ける
後続の最終パーティーが登攀していて「あそこを登った」と思えば感慨深い
何時だって登り終えた後の山は格好良く見える

またここからの獅子岩は、なるほど「空に吼える獅子」に見える
別名の大黒岩という視点で言えば「袋を背負った大黒天」にも見える
否ちょっと待って、「悩んでる猿」にも見える
などと、どうでもいい話に華が咲く
世慣れた年配者には、何気ない会話が案外沁みたりもする


「気持ちのいい山行でした」
山行後、sgmさんからメンバーに宛てたメッセージが届いた

たとえ大望でなくても、心に残る山はある
実に真理を突いた表現だなぁと唸ってしまった

気持ちの良い登攀
気持ちの良い天気
気持ちの良い景観

それもある
だがしかし何が一番気持ちが良かったかといえば、少し違う

知識、技術、配慮、そして課題と解決
皆が持ち寄って、共に成した充足
それがこの気持ちの正体なのだろう

天から見る大望でなくていい
地に足ついた場所から見ても、地球は青かった。


sak


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剱岳(中退)

2026/4/27-28 剱岳(中退)


未練と憧れ

 

最近、天候に恵まれない山が多い
そう感じるのは、自分を納得させるための言い訳だ

始まりは雨だった

自己防衛を促すかのような天候
加えて伊折のゲートは開門しておらず、ここからの歩き
山行をためらうシチュエーション

CLのsgmさんは、当たり前のように準備を始める
私も軟弱な心持を見透かされないように、後に続く

馬場島のキャンプ場の炊事場で雨宿りがてら小休憩
小窓尾根方面の林道を行くと堰堤に突き当たり道は終わる

雪だまりを渡って、ワイヤーネットのアスレチック
堰堤を高巻いて、しっかりした踏み跡を行く

軽量化に努めたはずの荷物が肩に食いこむ
それほどの距離ではないのだが、この高巻きが辛い登りとなった

鞍部でひと休みして白萩川へ下る
池ノ谷出合を見送ってしばらくは河原を遡る

右岸の岩場を小さく巻くと雷岩
ここから雪渓に乗って左岸へ渡る

 

折からの悪天で視界は通らず、登路として明瞭な雪のルンゼをアイゼンで行くことにする
途中雪が途切れて悪い所もあったが何とか歩ける

上部に行くにしたがって急傾斜となるが、樹林の開けた明るいほうへトラバース
傾斜が落ちたら、もうひと登りで小窓尾根に乗る
ちなみにこの雪ルンゼは本来の登路ではないことを後に知ることとなる

樹林の小窓尾根を淡々と行く
時にヤブコギとなるものの、概ね明瞭な踏み跡がある

1614m
予定ではここから池ノ谷へと下降するのだが、白霧で辺りは見通せない
底の見えない谷ほど、恐怖感を感じるものもない

雨は止みそうで止まない
雨と汗、加えて白霧が冷気を運んで体温を奪っていく

ここで一考
この先、池ノ谷まで下ってなんとか二俣までは行けるだろう
しかしあと二日、晴れてもらえるだろうか
自分の考えと選択肢をパートナーに伝える

 

土木工事を済ませて幕に入ればひと心地
白湯を呑みながら、明日の行程を話し合った
ラジオの天気予報によると、明日は晴れるが夕方から下り坂
明後日は低気圧の通過で風が強まり寒気が入るらしい

やがて雨も止んであたりが明るくなってくる
もう一時間早く止んでくれればというのは、やはり言い訳だ
テントの入り口を開けると、青空
そして目指す尾根が見えた

 


翌日
撤退は話し合って決めた

諦めぬことも大切だ
しかし自然は立ち向かうものではない
山に生きる謙虚さを忘れてはならない

初っ端から条件は良くなかった
それでもトライした
そこに価値はあったと断言する

池ノ谷の先に剱尾根が突き上げていた

唇を噛む想い
用意した日程を持て余すほどの撤退行
お互い態度には出さなくても、想いは同じだろう

それでも剱の一端に触れた充実
悔いは残るが、悔しさは力になる
来てよかったと心から思えた
これは言い訳ではない

未練が宿る
だからこそ、次に繋がる

今ここが、試練だ


sak



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八ヶ岳・阿弥陀岳南稜

2026/4/12 八ヶ岳・阿弥陀岳南稜


どんな山に行きたいですか?
と、メンバーに問いかける

残雪、沢始め、岩登り、ハイキング
四月の山は、行先さえ変えれば様々なシチュエーションを選ぶことができるからだ
そうして決まったのが、八ヶ岳・阿弥陀岳南稜だった

私が阿弥陀南稜を歩いたのは2002年1月
雪山を始めて2年が経った頃の話だ

雪山バリエーションに独りで取付く緊張感
そして意気込み
何かの爪痕を残したい
そんなエゴもあったと思う

あれから24年
寡雪の年、4月の阿弥陀南稜ってどうなんだろうと思いながら
あの時の緊張感と蒼き想いをトレースするのもまた良し

CLはtkmさん
南稜のリクエスト主である彼に務めてもらうこととした
バリエーションルートの引率、統率トレーニングを兼ねて計画と研究に当たってもらった

前夜、道の駅で仮眠
明るくなったころ舟山十字路に到着
すっかり雪はなく、車も1台だけ
さすがに冬が終わって閑散としていた

身支度を整えて、tkmさんを先頭にskmさん、sakの順で歩き出す
しばらく林道を歩き道標に導かれて南稜へ取り付く
少しの急登で尾根に出たらあとは淡々と登山道を行く
2200mを越えると所々に雪が出てきたので、チェーンスパイクを装着

 

立場山の先で地図上に破線は無くなり、ここからバリエーションとなるのだが人気ルートだけあってしっかりした踏み跡が続く
今日はおおむね晴れるが、午前中は風が強い冬型の気圧配置
反面、遠望は利くので背後にアルプスの山々が美しい
休憩がてら立ち止まっての山座同定は山ヤにとって楽しいひと時だ

 

ダムのような佇まいを見せる青ナギを越えて、無名峰の手前でひと休み
強風に晒される前に樹林帯でエネルギー補給と装備を装着
雪はあるもののアイゼンを出すほどではなく、チェーンスパイクのままで行く

 

 

雪少ないP1、P2は難なく通過できるが、向かうP3は岩塔が立ちはだかって威圧感がある
P3ガリーへのトラバース手前にある岩陰で風を避けながらアイゼン装着
雪はほとんどなさそうなので、アイゼンで岩に乗る練習を少ししてからトラバースに入る

 

P3ガリーの入り口は水線がベルグラ状
フィックスのワイヤーも切れているので、慎重に行動することを確認してtkmさんにリードを託す

5mほどトラバースして、凍った小滝となっているガリー入り口へと乗り込む
ガリーに入ると姿は見えなくなるので、手繰るロープで登攀の進捗を想像する
ロープ一杯でビレイ解除のコール
sak、skmの順で行く

ガリーにほぼ雪はなく、水線が細く凍り付いている
ピッケルとサブバイルで氷を叩くが、さすがにアイスアックスのようには刺さらない
浅く入ったピックを頼りにアイゼンの前歯に乗っていく

 

途中の大岩でピッチ切り
続いてロープを出しながらガリーを登ってP3ピーク
ここでアイゼンは外してP4、そして阿弥陀岳へ

 

 

山頂で八ヶ岳の山々を指呼しながら、過去の登攀を振り返る
24年前、南稜から始まり八ヶ岳の雪壁雪稜をいくつも攀った
そして、その想いを紀行に記した

読み返せば、あの頃のエピソードと思考が生き生きと蘇ってくる
それは記録ではなく、歩いた証といっていいだろう

 

 

引率トレーニングとはいえ、彼も同じようにこの山を振り返る時が来るのだろうか
そうであってほしいと願うのは、まぁ私のエゴだろう

あの日と今日
同じエゴでも残したいものは随分変わったな、と思えば微笑ましかった



今日はいい酒が飲めそうだ
そんなことを思いながら淡々と御小屋尾根を歩く

sak


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奥利根の山旅

2026/3/30-4/1
奥利根の山旅

清水-柄沢山-奈良沢-イラサワ山-小沢岳-下津川山-ネコブ山-桑ノ木山-ドウボン淵-三国川ダム

 

一年前

奥利根の縁に立って、そこへ身を投じることを躊躇った
あの時、稜線を越えた並行世界の私は今頃どこにいるのだろう

想いは過る
他に選択肢はあったのではないかと

そして今、またこの場所に立つ


2026/3/30

西谷後バス停手前の駐車場から車道を歩く

車道の除雪終了点に山スキーヤーが一人
柄沢山を往復するとのことだった

稜線を越え奥利根に入ると言った私を心配してくれた
天気が下り坂の予報だったからだ

淡々と涸沢川沿いを歩く
最初の休憩でワカンを装着
途中、沢の露出しているところが幾つかあった
明らかに去年より雪が少ない

二俣を左に進む
1550mあたりでわかんからアイゼンに転装し左岸の尾根に乗る
見上げる稜線には白霧が流れている

稜線に乗ると風雪こそないものの視界不良
一年前の光景を想い出す
またか?
これからの予報を踏まえて、ここから引き返すことも考えた

急いても仕方ない
まずは柄沢山を目指してゆっくり進む
踏み抜きがひどくアイゼンに加えてわかんを再装着

頂へと近づくにつれ視界は開け、行く手に柄沢山が現れる

「あの時、稜線を跨いでいたら」
ようやくこの心残りに応えられる安堵
そして白の海原へ

柄沢山北東尾根を下る
クラックの走った上部急傾斜を慎重に下るのだが、前日と思しきトレースがあった
左のゴトウジ沢には滑降跡があったので、その登り返しかと思っていた

ひとしきり下ると、今度は小ピークの上り下りを繰り返す
時折、ダケカンバが白く燃えるような立ち振る舞いを魅せる
そのたびに立ち留まってしまうのは美景に魅せられたことをいいことに一息入れたかったからに他ならない

件のトレースはしばらく続いた
どうやら2人でこの尾根を登ったようだった

どこから来たのか、何処を繋いできたのか
考えるだけで高揚し、想像を巡らせた

しかしこのトレースとも別れを告げる
1429.7峰から奥利根湖尻に下る細い支尾根
トレースの先に地図にはない観測小屋が見える
足跡の主はそちらから上がってきていた

少し引き摺られるような気持ちになったが、そこからトレースと別れて三ツ石小沢に向かう尾根を下る

この尾根を選んだのは奈良沢を雪上で渡るために、より上流のほうがチャンスも多いだろうという目論見だった
しかしアテにしていた三ツ石沢出合で雪上を渡ることはできなかった
仕方ないので渡渉前提で適地を探し下る

三ツ石沢の下流で飛び石を有効に繋げられそうな所があった
それでも10mほどは完全な渡渉となる
渡渉を想定して用意したシューズカバーの上に滑り対策でアイゼンを装着する
これは過去の経験から導き出した対策だった

渡渉を済ませたら、奈良沢左岸を下っていく
岩場を巻き下る場所もあったが藪中に雪を繋ぐことはできた

三右エ門沢出合手前で日暮れる
雪崩に巻き込まれない場所を吟味し左岸台地に幕を張る
明日は天気がどこまで保つか
その程度とタイミングの見極めが要所と考えながら眠りにつく


2026/3/31

夜半に雨がテントを叩く
幸いごく短時間で治まった

今日の距離を稼ぐためにヘッデンを灯して早出したい気持ちもあるが、もう少し奈良沢を下らねばならない
巻き下りをするためには視界も欲しいので6時に出発とした

奈良沢左岸をキープし下っていくと正面に奈良沢の観測小屋が見えた
その手前に、番手沢を秘める小沢が流れる
これを渡るためには100m上流のスノーブリッジを使うとの記録もあったが、すでに見あたらない
それならばと昨日の要領で渡渉する

奈良沢観測小屋の平坦地でひと休み
雪解けの泥濘に芽吹きを見て、ひとときの春を楽しむ

上イラ沢へ入る
上イラ沢は割れているところが多く、左岸の雪斜面を巻き気味に進む
右俣に入るとほぼ埋まっており、沢筋伝いにイラサワ山南の鞍部へと至る

尾根に乗ると、山向こうの景色が開けるとともに風が吹きつけた

白波立つ峰々
風に乗って森の王者が悠然と滑空する
遠く国境稜線では重たい雲が東から西へと流れていく
山に入っている実感が湧く

僅かな感傷に浸る間もなく、吹き付ける風に現実へと引き戻される
風の変わる時が行動終了のタイミング
そう決めて小沢岳南尾根を行く

イラサワ山
ここがこの山旅における目的地の一つだった

奥利根湖に囲まれた上に主稜線からも離れ、奥深さだけが際立つ場所
秀麗でも高峰でもないこの頂を目指すなど極めて少数派、理解され難い志向だ

何より自分にとっての価値を尊びたい
独りで山を歩く醍醐味
昨日出逢った「足跡」に共感したのも、そこに同じ意志を感じたからだ

本来の計画ではイラサワ山から小沢岳南尾根を登り、小沢岳手前から幽の沢山尾根へと進んで幽の沢山へ
そこから北東の尾根を下って小穂口沢、ブナ沢を経由して小穂口山
二つ目の目的地は踏んだことのなかった小穂口山

つつましい頂を二つ繋ぐ
そして小穂口尾根を上がって本谷山から三国川ダムに抜ける、そういう計画だった
しかしながら今後の展開によってはエスケープするほかないだろう
それを薄々感じてはいた

風が止んだ
次第に白霧が下りてきて、辺りは真っ白になる
そして再び風が強くなる

今行く急登がどこまで続くのかはっきりしない
雪庇との距離感もつかめず精神的にも体力的にも堪えた

1664峰に乗り、傾斜も緩む
ひと休みすると眠気が襲ってきて刹那に意味不明の夢を見る
時間は15時を少し過ぎたところだ
今日はここまでとしてブロックを積み上げ、幕場を整える
幕中で水を作っていると雨が降ってきた

簡素な食事をしながら、ラジオを聴く
天気予報を確認したら薄暮に寝袋へと収まる
そして風雨が強まるのを聞きながら眠りについた


2026/4/1

午前2時半
風雨は未だ強かった
もはや自分にできることはないので、ダメなら今日は停滞と決め込む

再び目覚めたときにあたりはしんとしていた
手早く撤収を終え、小沢岳南尾根を行く
風雨が収まったとはいえ、白霧に包まれ遠望は利かない
先の見えない雪尾根を淡々と登っていく

そして幽の沢山尾根との合流点
遠望は利くようになったが、眼下にあるはずの幽の沢山は白霧の中

今日を含めてまだ二日ある
小穂口山まで何とか繋ぎたかったが、これから天気は崩れて明日は1日雨予報
ここで決断せねばなるまい

雪の奥利根を繋いだのは3年前

計画を思い立ったとき、息を呑んだ
想像するだけで胸は高鳴った
視界には未来しかなかった

そして今
過去を憂いて、未来が見えたのか

高嵓を越えて小沢岳へ
最後の登りに差し掛かる頃、霧は晴れた
振返れば、柄沢山
あの山の向こうから山と谷を繋いで来た
そして至らなかった小穂口山

小沢岳に立ち、山々に一礼する
未来は自分で決めた
ただそれだけだ

下津川山からネコブへ向かう道中、早くも天候は崩れる
割れた雪庇の迷路を行きつ戻りつし、ネコブでは再び白霧に巻かれた
桑ノ木山からは蛇崩沢右岸尾根を下ってドウボン淵に至る
そして時にデブリを越えながら十字峡、三国川ダムを目指す

あの時、稜線を越えた並行世界の私は今頃どこにいるのか

たとえ違う選択をしていたとしても、この山旅が止むことは無い
その確信はある

頭の中で奥利根の地図を広げる
何処から入って、どこに抜けようか
もうすでに次の計画を考えて高揚する自分がそこにいた


sak


3/30
西谷後5:08-柄沢山12:14/12:25-奈良沢三ツ石小沢出合17:05-奈良沢左岸18:12【幕】

3/31
幕場6:00-奈良沢観測小屋7:15/7:28-上イラ沢出合7:45-イラサワ山11:32/11:46-Co1664m先15:08【幕】

4/1
幕場6:02-小沢岳8:11/8:30-下津川山9:42/10:03-ネコブ山12:41/12:53-桑ノ木山14:26/14:37
-下津川林道15:42/15:50-十字峡17:21-三国川ダム18:10

↓動画も

 

 

2026冬山備忘録

冬の出来事

午後の陽光
蒼氷も、やがて滴り輝きながら解けていく
そうして冬の終わりを予感する

この春、末子が社会人となり、私は家督を継ぐ
父に気遣いながらも、自活する気力があるのだからまだ大丈夫なのだろう
老いたのは父ばかりではなく、私とて同様だ

そして、君に病が見つかった
それがこの冬の出来事だった


2025/12/14
八ヶ岳南沢

今シーズン最初のアイスクライミング
nksさん、sgmさん、tkmさん、sakの4人

体の使い方、レスト体制のおさらい
そして、tkmさん待望のアイスクライミングデビュー
南沢大滝と小滝で登り込み
美濃戸まで車で乗り付けている安心感
皆、薄暗くなるまで登り込んだ

これまでの積み重ねを体が思い出してくる
tkmさんも楽しんでくれている

この冬はようやく目標に触れることができるのか
そんな予感をさせてくれる、好い日だった


2026/1/18
八ヶ岳広河原沢見晴らしルンゼ

どうやら、今年は広河原沢が良いみたい
ならばと、見晴らしルンゼを計画した

舟山十字路も盛況で何とか駐車場所を確保
広河原二俣も前日から訪れている面々のテントが散見
しかしながら左俣へ向かうのは我々のみ
皆、右俣へと向かっていく

入渓点で身繕いをしていると、1パーティやってきて左俣の大滝まで行くとのこと
そして終日、見晴らしルンゼは我々のみであった

左俣から見晴らしルンゼに入ると一から五まで滝がある
まずは日陰で氷結状態のいい二の滝をsak、nksさんでお互いリードとフォロー

次に四の滝
こちらは日向で眩しいくらい
反面、氷は溶け加減
小さいながらも傾斜のある2段目の滝を登って、懸垂で戻る

最後に五の滝はお互いフリーで抜けて、御小屋尾根へ
傾斜という意味では少し物足りなさを感じたものの、様々な滝を登り巡ることができる素晴らしい場所だ


2026/1/25
西上州・相沢奥壁大氷柱

当日4時集合
ちょっと早めの出発

相沢大氷柱は高矩があるので、一人登るのに時間を要する
出来るだけ早めに取付きたかった

結局は他パーティーとの協調も含めて一人1本だけだったが、皆満足の様子
nksさんは去年エイプリフールに来た時、相沢大氷柱を「登れる気がしない」と言っていたけどトップロープながらノーテンで抜けた
tkmさんも無事トップアウト
sgmさんは安定したクライム
他パーティーとのコミュケーションも取れて充実した一日となった


2026/2/1
西上州・仔犬殺しの滝

相沢登山口からさらに林道を進む
さすがにデリカは悪路走破性が高く、林道が土砂に埋まった場所まで入ることができた
ここから1時間ほどのアプローチ

仔犬殺しの滝を一段上がった所を起点として、トップロープ支点を右の立ち木に取れば50mロープで張れる
nksさん、tkmさんの3人、高回転率で登り込める
各々ルートを変えて4本ほど登り込む

 

加えてアックス振り方やレスト体制の確認
アイスクライミングができる場所とタイミングは限られている
時間が許す限り、無駄なく取り組むことができた


2026/2/8
足尾・松木沢無名ルンゼ

今日は行くべきかどうか悩んだ
関東地方に大雪警報が出たからだ

茨城からもアクセスが良く、前日の天気読みで雪が少なそうな足尾にした
しかしながら朝のラジオでは日光・足尾に大雪警報を発していた
それでも、結局は行くんですけどね

15センチほどの積雪をものともせず、tkmさんのデリカは走駆する
銅親水公園に着くと雪も上がる

すでに駐車場には数台の車
1パーティーは丁度出発するところ
そのほか、前日から入ったパーティーのテントがジャンダルムを望むあたりに張られていた

昨日ウメコバに行ったパーティーと情報交換
黒沢は数パーティー入っているらしい
駐車場で見かけた5人も黒沢へ向かう堰堤で準備中
ならばと夏小屋沢に向かうと順番待ちが3組

ルートというよりは傾斜に強い場所で登り込みたかったので無名ルンゼに向かう
さすがにマイナーなためか誰もいない

距離はそれほどではないが上部は立っていて、幅も狭い
足の置き場を吟味しながら立ちこむがリードではアックステンションを交えながらとなった

tkmさんは今までで一番難しかったらしい
それでも慣れてきたら、スタンスの少ない滝の左側をトップアウト
トップロープならこの傾斜も不安なく行ける
レベルアップを実感できる登りとなった


2026/2/14
日光・雲竜渓谷友不知

雲竜渓谷に行くのは少々躊躇があった

なぜか

そう、氷瀑観光で大勢のハイカーが訪れるからだ
地味でひと気のない場所を好む私の嗜好に合致はしないのだが、やはりアイスクライミングに取り組む上では避けては通れない場所だろう

 


2月の冷え込みが一段落し、最近は2月と思えないほど暖かい日が続いた
燕岩の氷柱は一部崩壊し、その残骸が転がっている
雲竜瀑を見物していつの日か登ることを夢見ながら、友不知ゴルジュ左岸へ

このエリアも上部は氷結しておらず、岩が露出
騙し騙し上に抜けて、あらかじめ見定めておいた傾斜のある場所にトップロープをかけて登り込む
nksさんも安定した登り
やはり、場数と情熱は成長の特効薬だ

午後の陽光
蒼氷も、やがて滴り輝きながら解けていく
そうして冬の終わりを予感する

すぐ治療が必要なわけではないのだから
そう言う君に不安はあったと思う
ただ何も言わずに私を送り出してくれた

目指す場所がある
過ぎ去る月日は、誰にとっても有限だ
もちろん、二人にとって残された月日は多くはないだろう
この冬はそれと向き合いたかった

 

2026/2/21
奥鬼怒・野門沢・伏龍鳳雛

鹿島槍に向けて、最後の調整として奥鬼怒北面を選んだ

 


激下りがあるにしろ、アプローチは1時間弱と至便
伏龍は峡谷を抜けた先に控える氷瀑
素晴らしいロケーションに見惚れる

sgmさんリードでnksさんとsakを引き上げる
50mロープで滝身左の灌木+スクリューで1ピッチ
2ピッチで残りの1段目と2段目を登る

下降は落ち口の右岸壁にある懸垂支点で20mくらい下るのだが、右岸の小高い台地に乗って立ち木でピッチを切る
そこからは50m下降で取付きに戻れた
記録では60mロープでの登下降記録が多かったので、少し心配していたがなんとか50mで対応できた

この立ち木を使ってロープを張って登り込む
トップロープの気軽さもあってそれぞれのルート取りで立っているところを行く
sakは途中で不意にアックスが外れてしまい、テンション
アックス引っ掛け登攀は、まだまだ要修行といったところか

鳳雛は緩傾斜ながら発達も良く、気持ちよく登れる

次週は鹿島槍
あとは天気が晴周期となることを願うのみだ


2026/2/27-2/28
鹿島槍ヶ岳・北壁主稜(中退)

結果から言えば、遠かった
目指す壁は霧に隠され、拝むこともできなかった
それでも手に届くところにある、そう思える実感

鹿島槍スキー場の駐車場から大谷原
そこから天狗尾根はオールラッセル
さすがに体力強度を要し、天狗ノ鼻に着くころ日暮れとなった

ここまでは、以前天狗尾根をトレースしたこともあり既知の範囲だ
高度を上げるに従い次第にガスが濃くなる
眼下に見えていた大町の街はいつしか消えた

水を作って簡素な食事
明日のタクティクスを確認し、3時起床で状況判断することとした
夜半から断続的に風がテントを揺らし、時折目を覚ました

3時、寝袋に潜りながらsgmさんに意志確認
この風で一時停滞で意見は一致
明るくなるのを待って、次なる策を練ることとした

朝食をとりながら、今後の対応を協議
依然風は強く、視界もない
疎らに降り落ちる雪は降雪か、舞雪か

幸運なことに電波が繋がり、天気予報を確認できた
今日は午後になってから晴れ
明日は冬型が強まり、今より強い風が吹くだろう

今日を停滞として明日勝負
と言いたいところだが、不安は残った

生きて山を成せるように
共に越えられるように
不安とどう向き合うのか

撤退にも価値はある
あとはタイミングの問題だ


-春-

庭に檸檬の苗木を植えた
「庭に植えるなら、檸檬がいい」
そう言ったのは君だった

苗木が実をつけるには数年かかるらしい
君のヤマは初夏に始まる
お互いの山を生きて成せるように

そして実った檸檬を二人で噛む
私が密かに課した数年後の目標だ


sak

 

↓動画も